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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
※(ローマ数字4、1-13-24)
「見かけない女だよ」
見かけない女と云うことは女を認めてのことで、さっきのように夢をごっちゃにしたような返事でもなさそうであった。
「そうかね、ほんとに知らないかね」
「知らないよ」
「そうかね」
それ以上聞いたとて何にもならない。広巳は何か己の頭の中の物を無くしたような気もちになってふらふらと歩いた。
※(ローマ数字4、1-13-24)
広栄は縁側に近いところで店男の定七と話していた。土地の大地主で、数多の借家を持ち、それで、住宅の向前に酒や醤油の店を持っている広栄の家は、鮫洲の大尽として通っていた。
そこは表の客座敷の次の室で、定七の腰をかけている縁側の敷板は、木の質も判らないまでに古びて虫蝕があり、これも木目も判らないまでに古びた柱によって、その家が如何に旧家であるかと云うことが窺われるのであった。もう一時を過ぎていた。広栄は左の脚の故障があるので、室の中でも松葉杖をはなさなかった。松葉杖は傍にあった。広栄はセルの単に茶っぽい縦縞の袷羽織を着て、体を猫背にして両脚を前へ投げだしていた。広栄は広巳の兄であった。
「汝は知らないのか」
「それでございますよ」