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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「ちょっとで好いのですよ、来てください」
年増の女が歩いて往くので跟いて往くとすぐつぎの室の扉を開けて入った。
中には手前の壁に寄せかけて安楽椅子をはじめ五六脚の形のちがった椅子を置き、そのむこうには青い帷を引いてあった。そこは寝室らしかった。
「さあ、ちょっとここへかけてくださいよ」
年増の女が入口に近い椅子に指をさすので讓は急いで腰をかけた。
「なんですか」
年増の女はその前に近く立ったなりで笑った。
「そんなに邪見になさるものじゃありませんよ」
「なんですか」
「まあ、そんなにおっしゃるものじゃありませんよ、あなたは、家の奥さんの心がお判りになったのでしょう」
「なんですか、僕にはどうも判らないのですが」
「そんな邪見なことをおっしゃらずに、奥さんは、お一人で淋しがっていらっしゃいますから、今晩、お伽をしてやってくださいましよ、こうして、お金が唸るほどある方ですから、あなたの御都合で、どんなことでも出来るのですよ」
「だめですよ、僕はすこし都合があるのですから」
「洋行でもなんでも、あなたの好きなことができるのじゃありませんか、私の云うことを聞いてくださいよ」