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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

広義は広巳の方へ隼のように駈け寄った。一方の手に茶碗を持っている広巳は、その茶碗の茶を甥にかけまいとして、一方の手で走りかかって来た広義を支えた。

「あぶない、茶がかかる」

「かかったって、いいや」

広巳はすばやく茶碗を置いた。

「茶が眼にでもかかったら、眼が潰れるぞ」

「潰れたっていいや、東郷大将だ」

「眼が潰れたら、軍人になれんぞ、軍人になれなきゃ、東郷大将にも、乃木大将にもなれんぞ」

「なれるのだい、なれるのだい、眼が潰れたって、なれるのだい」

広義は広巳の首ったまに飛びつこうとしていたが、広巳がかわして飛びつかせなかった。

「眼が潰れたら、鉄砲が打てないや、鉄砲が打てない軍人があるものかい」お町に気がついて、「なあ、姨さん」

お町は笑っていた。

「眼が潰れたら按摩さんになるのだよ、ねえ坊ちゃん」

広義は広巳の首ったまに手がやれないのでじれていた。

「痴、お町の痴やあい」

「だって、そうじゃありませんか、眼が潰れて、鉄砲が打てなけりゃ、按摩さんになるより他に、しようがないじゃありませんか」

「なに云ってやがるのだ、お町の痴の、婆あやあい」

その時広巳の支えていた手に隙が出来た。