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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「どうかお入りくださいまし」
少女だちはしとやかに頭をさげた。それでも広巳は己へ云っているとはおもわれないので、そこをはなれようとした。
「あの、もし、貴郎は、鮫洲の」
鮫洲と云えば確に鮫洲である。広巳は足をとめて少女を見なおした。
「貴郎は、山田さんでいらっしゃいましょう」
鮫洲の山田と云えば己のことである。
「鮫洲の山田ですが」
広巳は眼を見はった。少女の一人は莞とした。
「奥さまがお待ちかねでございます」
逢う約束をしている者はなかった。広巳は人違いだろうと思った。
「それは、人がちがってましょう。おいらは、いや、わたしは、鮫洲の山田広巳ですが」
「人違いではございません、貴郎でございます」
違わないと云っても己には覚えがない。
「だが、わたしは、そんな方は知らないですが」
「お入りくださいましたら、すぐお判りになります」
ついしたら不倫な嫂ではないか。だが、まさか。
「何人です」
「貴郎の御迷惑になるような方ではございません、お姓名を申しあげても、貴郎は御存じないと思いますから」
こっちは名も知らない人か、それでは嫂でもなさそうであるが、それなら何人か。己には他に交渉を持っている女はない。