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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

お時は揮りかえった。

「そうね、半鐘ね」

「そうだよ、それで酒の時は三つばんだ」

「肴の時は」

「肴は二つか」

「それじゃ、あの時は」

揉あげは笑った。

「あれは、あの時は五つさ」

お時はあの時から思いだした。

「旦那、八千代さんは、どうするのです、まだ話はすまないのですか」

それは話をするために呼んでいた歌妓を出してあるらしい。丹前は頷いた。

「もすこし待たしとけ、だって彼奴、線香代をつけてもらって、かってに遊んでる方がいいだろう」

「そう」

「肴がない、何か見つくろって持って来い」

「そうね、どんな物がいいでしょう」

「旨いもので、早く出来て、それで金がかからなけりゃ、なおいいや」

「ずいぶん、ねえ」

お時はまた愛想笑いをしいしい出て往った。揉あげはどっかりと坐った。

「まずくって、遅くって、高くって、酒がわるくって、ここでいいものは、室の風景だけだよ」

角刈がにやりと笑った。

「おめえでも、風景が判るかい」

「判るさ、俺はこれでも、漢詩の平仄を並べたことがあらあ、酔うて危欄に倚れば夜色幽なり、烟水蒼茫として舟を見ず、どうだい、今でも韻字の本がありゃ、詩ぐらいは作れるぞ」