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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
それはお杉の娘のお鶴であった。
「今日は」
広巳はお鶴が時おり変にからまって来るので嫌っていたが、黙っているわけにもいかなかった。
「鶴坊か」
「どこへいらっしゃるの」
「ちょっとそこだ」
「そこって、どこですの、いい人のとこ」
広巳は気もちがわるかった。
「そんな処じゃないよ」
「それじゃ、どんなとこ」
広巳は煩かった。
「云われないとこ、それじゃ、やっぱりいい人の処ね、若旦那のいらっしゃる処だもの」
広巳は苦笑した。
「そうでしょう、やっぱりそうでしょう、いい人の処でしょう」
広巳はもてあました。
「ほんとに若旦那は、邪慳よ、そりゃあね、私のような、女のうちにも入らないものなんか、鼻もひっかけてくれないでしょうが、それにしてもあんまり邪慳よ、若旦那は」
広巳は平生それで困らされていた。
「うう」
「ううなんて、ほんとに邪慳よ」
広巳はとっとと往こうと思った。
「そんなに邪慳にするものじゃないことよ、そんなに何時も邪慳にするなら、わたし、若旦那に知らしてあげたいことがあるが、云わないことよ」
「なんだ」
思わずつりこまれて、しまったと思った。
「云わないわ、若旦那が、そんなに邪慳にするなら、わたし、若旦那の喜ぶことを知ってるのだが、云わないことよ、若旦那のことを、平生云ってらっしゃる方があるのだけど、それはただの方じゃないことよ、