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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「そ、そんなことを云うものでねえ、そんなことを云うものでねえ、そんなことを云うから喧嘩になるのだ、お鶴を呼びなよ」
「いやだよ、わたしは」
その時がたびしと入口の障子を締めて出て往く下駄の音がした。
「困ったものだ」
長吉はほんとに困ったような顔をした。
「うっちゃっておきよ、あんな奴は、くせになるよ」
「そうはいけねえ、娘の子だから、どんな不了見を起すかも判らねえ」
「元から不了見だよ、あれは」
「そんなに云うものでねえ、親子じゃねえか、親は子を可愛がり、子は親を大事にしなくちゃならねえ」
「あれが、親を大事にしたことがあるの」
「大事にするじゃねえか」
「おまえさん、ばかだよ、あれで、大事にしてくれると思ってるの」
その時入口の障子が開いて人の声がした。それは壮い男の声であった。音蔵はもう箸も何もおいていた。
「何人か来たよ」
お杉もそれを聞いていた。
「お客さんがあっても、取次に出るような者は、一人もいねえのだ、何と云う因果なことだ」
さすがに声はちいさかった。お杉はさも癪にさわると云うようにして起って往った。そこは土室に臨んで三畳の畳を敷き、音蔵が手内職の袋張の台を一方の隅へ置いてあった。