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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
女の怪異
ぼつぼつではあるが街路の左右に点いた街路照明の電燈の燈を見ると菊江はほっとした。菊江はこの数年来の不景気のために建物の塞がらない文化住宅の敷地の中を近路して来たところであった。
微曇のした空に月があって虫の音が一めんにきこえていた。街路には沙利を敷いてあった。菊江はその街路を右の方へ往った。その街路に面した方にも処どころ空地があって、建物が並んでいないうえに、もう十時になっているので、郊外の新開町はひっそりとしていた。
その街路は右の方へ半町ばかり往くと三叉路になって、左は暗いたらたらおりの街路になり、右は電車の停留場前になって、すこしの間ではあるが人道と車道の区別をした広い街路には、その境界に植えた鈴懸の葉に電燈の燈が映えていた。そこには街路の左右に各種の商品がならんでいた。菊江はその商店の一軒に褐腐を買いに往くところであった。父親が会社の用事で仙台方面へ出張して、母親と小さい弟しかいない留守許で、母親が胃に故障を起して痛むのを温めるために褐腐と云うことになり、母親は弟を伴れて往けと云ったが、病人を一人遺しておくこともできないので、市内の会社の事務員として朝晩に通って慣れている路であるから平気で出て来たものの不安であった。