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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
その室の一方は窓になって月が射していた。燈と思ったのはその月の光であった。道家はそこで腰から皮籠を解いて、その中の乾肉を執って喫い、それが終ると傍の木の根の枕を引寄せて寝たが、疲労しているのですぐ眠ってしまった。
そして、眠っているうちに何か枕頭で物の気配がするので、ふと気が注いて眼をうすめに開けてみた。道家は右枕になって寝ていた。大きな蟇のようなものがこちら向きに坐って、口をぱくりと開けて眼をぎろぎろとさしているところであった。道家ははっとした。彼は枕頭においてある刀に手をかけるなり、飛び起きざまに切りつけた。と、大きな地響のような音がした。彼はそのまま一方の窓から飛び出て走った。
雑木に突きあたり草の根に足を執られたりして、しばらく走ったが、べつに追って来る者もないようであるから、立ちどまって後をふりかえった。そこは見覚えのある村の径であった。道家はほっとしてやるともなしに眼を月にやった。西に落ちかけた月の周囲にぼうとした暈がかかっていた。
「や」
道家は気が注くと共に北の空に眼をやった。雲の間になった北斗の七星に白気のようなものがうねうねとかかっていた。