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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
※(ローマ数字3、1-13-23)
女は坂を登ってむこうの方へ往った。芳郎はまた急ぎ足になって坂を登り切った。と、もう女の姿は見えなかった。彼は不審しながら上の路を右の方へ往ってみたが、そこにも女の姿はなかった。で、彼はまた左の方へも往ってみたが、とうとう見つけることができなかった。それでも諦められないので彼は終日その辺を歩いて、その日はとうとう演説にも往かなかった。
赤い花はまた鮮かな色をして芳郎の眼の前にあった。彼はもう何事も手につかないようになって、日日その辺をさまよい歩くようになったが、その時分からひどく健康が衰えて来たので、親類の者や葛西家に使われている者などが心配して、無理に勧めて彼を熱海へ転地さした。
※(ローマ数字3、1-13-23)
芳郎の往った家は相模屋と云う熱海では一流の温泉宿であった。彼はそこに滞在しながら心静かに養生することにしたが、赤い花の女のことが浮んで来ると、みょうに神経的になって夜も眠られなかった。
夏が過ぎて秋口になって来ると、やや彼の健康も回復して来た。彼は東京から見舞に来る同志と政治上の意見を闘わしたり、ちょっとした論文を書いて新聞に送るようになった。