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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
女伴は小さな漁師町の間を通って傾斜のある小路を登って往った。芳郎は女伴に怪しまれないようにと思って、よほど距離を置いて歩いた。女伴は時どき笑い声をたてたが背後は向かなかった。
女伴はやがて別荘風の二階家の見える家の中へ入って往った。芳郎は静かにその門口に往って月の光に晒された表札に注意した。表札には杉浦と云う二字が書いてあった。……いずれ東京から来ている人だろうが、どうした人だろう、そのうちに何人かに聞いてみようと思って、彼は相模屋の方へ帰って往った。赤い花の女の影のようにその女のことが軽く頭にあった。
その翌日になって芳郎の門下同様にしている新聞記者の一人が、彼に論文の依頼かたがた遊びに来た。芳郎はそれに酒などを出して対手になっていたが、ふと杉浦のことを思い出して聞いてみた。
「君は物知りだが、このすぐ前に、杉浦と云う別荘があるが、あれはどうした家か知らないかね」
「あ、杉浦、杉浦なら知ってますよ、ありゃあ、有名な御用商人じゃありませんか、きっとそれでしょう」
「そうかも判らないね、昨夜、海岸へ散歩に往ってて、そこの女らしい女を見たよ」
「じゃ、たしかにその杉浦だ、佳い女でしょう、お気に入ったら、お貰いになったら如何です」