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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「おや、ここに家があったのか」
益雄は二三回通っているのにそこに家のあったことに気が注かなかったので驚いた。
「ちと、どうかお掛けなすってくださいませ」
二十二三に見える長手な顔をした淋しそうな女で、白っぽい単衣の上に銘仙のような縦縞の羽織を引っかけていた。
「ありがとう、ここに家があったのですか、ね、え、二三回とおったのですが、ちっとも気が注かなかったのですよ」
「こんな小屋がけでございますから、木の陰になって見えなかったのでございましょう」
女は笑顔になった。益雄は女に親しみを感じて来た。四畳半位ある座敷の前には小さな船板のような縁側がついていた。
「どうかおかけくださいませ、むさくるしいところでございますが」
「すこしお邪魔さしていただきましょうか」
益雄は縁側へ寄って往った。女は何時の間にか起って薄い小さな蒲団を持って来た。
「穢い蒲団をあげましょう、どうかお敷きくださいませ」
「いや、どういたしまして、蒲団は好いのです」
「それでも冷えますから」
女の匂がそそりとした。益雄はちょっとお辞儀をしてからその蒲団を引き寄せて腰をかけた。
「お茶はさしあげません、あまり穢うございますから」