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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
女は元の処へ坐りながら云った。
「お茶はたくさんです、どうかおかまいなさらないように」
益雄は思いだして敷島の袋とマッチを袂から出して煙草に火を点けた。
「やっぱり東京から、お出でになりましたのでございましょう」
女はもう針を持っていた。
「そうです、東京からまいりました」
「御勉強にでもいらっしゃいまして」
「なに、すこし暇ができましたから、一週間位前に来て遊んでいたのですよ、それが家が忙しいものですから、親爺に呼ばれて、明日は一番の汽車で帰るのです」
「東京は好い処でございましょうね、私は一度も東京へ往ったことがございません」
「そうですか、では、一度是非いらっしゃい、でも住んでるとうるさい処ですよ」
「そうでございましょうか、私達のような一度も往ったことのない田舎漢は、どうかして東京に住みたいと思いますわ、花のように着飾ったな方が、ぞろぞろと街いっぱいになって歩いておりましょう、ね」
益雄は女のぎょうさんな云い方がおかしかった。
「まさか、そうでもありませんよ、私達のような汚い奴も歩いてるのですよ」
「でも」
女はそう云ってから笑った。益雄も声をだして笑った。