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にっき

日記

宮本 百合子

10 一九二四年(大正十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,778 字 · 82 页

青空文庫

二月十四日

志賀直哉氏の敬服者。「雨蛙」その他の話から、三時頃まで居、作の苦心談しきりにされるが、遠慮なく云えば、やや八点五分の方――不肖の息らしい。作の場合の心持など、本ものの書ける人と覚えず。作ることに努力しすぎるから。

すぐ間もなく浜中氏帰宅、昼一時も自分の時間なし。

「よき中流人」のために、A B C of collecting old continental pottery をよんで居る。これで見ると父上の collection など、まだまだ。同時によいものの見られないのを惜しく思う。Holland のもの少しわかった。イタリーのマジョリカはよいのを見ないので見当がつかない。

二月十四日 木 晴

実によい天気。日が朗らかにさし、縁側に坐って庭を見て居ると、日の光が魂を吸い出す。浜中氏と十二時頃から出かけ、神田の丸善にゆく。地震後始めてだ。まだ雑然とはして居たが、二階があるだけ本店よりは混雑して居ない。目について欲しかったが、高くて買えなかったのは Art Italian、表紙の絵が実に強い感じを持って魅された。Shaw の Pygmalion、チェホフの The Duel & other stories を買い、リリアンにやるのによかろうとおひなを買い、資生堂にゆく。