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にっき

日記

宮本 百合子

10 一九二四年(大正十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,778 字 · 82 页

青空文庫

「学校の先生や何か知って居る人が随分あるから面白いのさ」

面白さは何かと考えて見ると、皆、一人一人の月給年給が書いてある。それ以外、面白そうな点はなし。電車などでよくひとの懐中ものの中を一寸のぞきたそうにする人あり。

「此那連中皆勅任官でしょう。それでほら、十級八級、八級七級、だから俸給と何なんか一向一致しないのだ。」云々

人がいくら金をとるかと云うことが、これほど興味あることとなる世の中はおそろしいのだ。

私は、それを傍に見、日夏耿之介の日本詩史をよむ。

私が、元のように其那下らないものの何が面白いのだ、と云う調子で云ったら、Aは、さも侮蔑されたように、

「百合ちゃんのように家に居てすきなことをして居る人には必要でもなく興味もないかもしれないが、外に出て居る男には」必要と切実な興味があることを主張するだろう。

Aに働かせ、私が家居しすきな高踏的情趣を味って居る以上、私は謹んで黙して居る。が、深く考えると、心にこれ丈の感を持ち、淋しい間隔を覚え乍ら彼に正面からそのことについて自分の評言を洩さない私は利己的な狡い女だ。

一面に、Aが、私のそれを云う真意を解せず、妙に力もぬいたすてばちな調子で、