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こよみ

暦

壺井 栄

「新潮」1940(昭和15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页

青空文庫

それを知っているのかいないのか、高子はいっこう平気で、

「正昭もうすぐ帰るの、もうすぐ。そしたら私らまた新婚よ」といって皆を笑わせもした。

作太郎が爪に火をともすようにして儲けた金を嫁さんが臍くって、それが回り回って正昭のふところへ入るとしたら、世の中はおもしろいものだと、実枝はようやく救われたような気持になり、高子の腕にからみついていった。そして、

「不浄の金も生きてくるんで」と、おおげさなことをいった。何の意味か分らず、え、何? と聞き返す高子に、実枝は何でもないというような少し甘えた笑い顔を向け、

「高姉さんはゆっくりしいのう」といった。

「おおけに、ところがそれができんの、明日の晩帰るつもりよ」という。

「姉さんこそ待っとる人もないのに、ゆっくりしていき」と、クニ子も声に力を入れた。

口々にすすめられても高子は、昨日面会の予定なのに早く行かないと自分が病気でもしているのかと、正昭にいらぬ心配をかけるからと言訳をし、

「これでも待つ人もあるんだからね」と、胸を張ってみせた。

ミチは持てるだけ持って帰ろうとでもいうようにいろいろなものを欲ばった。夫の万吉が酒の肴に味噌漬を好きで、しかもそれは田舎の麦味噌のが一ばんよいと、来るとからあちこち頼んであったのを甕につめ、上の方があいているからといってはまた味噌をつめ足し