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こよみ
暦
壺井 栄
「新潮」1940(昭和15)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页
それが昨日のことであった。
「なあ、誰にあげたんぞいや」
重ねての問いにフサエは初めて口を開いた。自分のせいではないことを責められてでもいるように不貞た顔つきで母親の肩のところを見つめ、
「チヨノさんと玉枝さんとおよねさんとおかねさんと、おますやんとかあやんとおつねさんとに一かせずつやったんじゃい」
「それだけじゃなかろう、あとはどうした?」
「みんなおすえさんに上げたい」
まるで突っかかってくるようなフサエの言葉にいねは思わず笑顔になり、チヨノさんに玉枝さんに、と指を折ってその一かせずつの人数を数えた。フサエのいうとおりならば、おすえさんの手にはまだ四十幾かせ残っている勘定になる。いねは、ふうむ、と首を傾け、カヤノに向って、
「カヤノ、お前太郎兵衛どんまで行てな、おすえさんに一だけあげるせにいうてあと貰てこい。フサエがな、売るもんを知らんとあげたんじゃせにいうてな」
「ええい」
カヤノは肩をふって反対した。
「ほんなら八重が行てくれるか」
「ん」
案外八重は素直に引受けた。しばらくすると八重はおすえさんの母親といっしょに戻ってきた。来るなりおすえさんの母親は、