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こよみ

暦

壺井 栄

「新潮」1940(昭和15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页

青空文庫

二

それは実枝自身に恭平という将来の相手があるからであろうか。恭平は少し離れた村の農会に技手として働いている青年である。実枝はその恭平の日に焼けた顔を思い浮べるだけでも自分の仕合せが胸の底から湧き上ってくる。この仕合せをクニ子は知らないにちがいない。平気で花を作っているけれど、いつまでも平気で花に心を傾けていられるであろうか。あの花への愛情と熱情を、せめて半分だけ自分自身に向けることはできないのであろうか。あの情熱はちょっと方向をかえればもっと大きな喜びの中で、もっと大きな花を咲かせるかもしれない。実枝はどうかしてクニ子の肩をつかまえ、クニ子が背を向けているものに面と立ち向かわせたいと思うのであった。

二

同じ両親、つまり日向重吉と妻いねの間に生れ、大勢の姉たちの誰とよりも永年いっしょに暮してきている二人であるのに、クニ子と実枝は両親の血を別々に分け合ったように異った性質に生れついていた。その顔立ちまでクニ子は痩せ型の母親に似ている! 実枝の方は父系似で、若い時から十七貫を下ったことがなかったという祖母のかやに生写しの丸い、太ったからだをしていた。

人間の持前の性格というものが、生れでる前後の両親の置かれた環境に多少とも左右されるということがありうべきことならば、その結果はクニ子の場合にもあてはめられるかもしれ