轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
こよみ
暦
壺井 栄
「新潮」1940(昭和15)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页
ない。十人兄弟の九人目であるクニ子が生れる時、日向の一家はその二三年前から徐々に樽屋の仕事を失いかかっていて、大勢の家族はその日その日をつなぎかねるほどのどん底に落ちていた。もうあと一年で師範学校を出る長男の隼太が夏休みに帰ってきているところへ債権者がつめかけ、高松の学校へ行くほどの金があるなら貸金を返してくれと若い隼太を泣かせたり、いねが実家へ相談にゆくともうその顔を見ただけで逃げ腰の兄の態度にいねを憤らせたり、時には重吉を自棄酒に浸らせたり、このままでゆけば家も屋敷も売払ってしまわねばなるまいというところまで行っていた。そういう時に望まずして生れてきたクニ子は、まるで一家の苦悩を分け合ってでもいるようにおとなしく、そしてその両親といっしょに世間を狭く感じているような顔つきで成長していった。髪の毛の逆立っているクニ子の守りをしながら祖母のかやは口ぐせに、
「よい子になれよ、よい子になれよ」
と、その逆立った髪の毛を撫で下した。頭を撫でてやると疳が納まるというのがかやの信条で、かやは上から下へ九人の孫の頭を撫でてきたのであったが、髪の毛が逆立っているのはクニ子だけであった。