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ししゃのけんり

死者の権利

浜尾 四郎

「週刊朝日 秋季特別号」1929(昭和4)年9月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,854 字 · 61 页

青空文庫

さすがに小夜子も気がひけるのでしょう。然し時々会見を申し込んで来るので会いますと、その時は、はっきりと金のことをいうのです。或る時とうとうはっきり額をいい出しました。手切金として千円、子供の養育費として取りあえず二千円くれと申すのでした。

私はこんな話は値切れば無論値切れると考えていましたが、ともかくそんなに急に今は出せぬと申しますと、彼女はその日ははっきりした返事はせず、そのまま別れました」

どうです、カフェーの女に対する春一の気持は兎も角徹底したものではありませんか。ただひどくことを簡単に考えていますね。尤もこれまでの春一の供述が果してどの程度まで真実であるかどうかは別ですけれど。

扠、犯罪当日のことについては次のようにのべています。

「小夜子から最後に来た手紙はごらんの通り、急用があるから某所に来てくれ、ということをいっているだけでこれは速達便であります。私はいよいよ談判を定めるために出かけました。そうした手切金の一部として五百円やるから、私から出した手紙をもって来てくれるように、よそからカフェー・パローマに電話をかけました。(彼女はその時店におりましたから)