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ししゃのけんり
死者の権利
浜尾 四郎
「週刊朝日 秋季特別号」1929(昭和4)年9月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,854 字 · 61 页
之は少し穿ち過ぎた推測で恐縮ですが、私の所にあんなに度々脅かしの手紙をよこしたのは小夜子一人の智恵ではないかも知れません。会ったことはありませんが、何でもひどく性質の悪い兄がどこかのガレージに勤めているという話ですから、多分その男の入智恵ではないかと思われるのです。其奴が後についていて、小夜子をツツいたのでしょう。私なんかはいい食い物ですからね。
そこで段々脅かしの文句が烈しくなりますし、一方私の結婚問題も段々具体化してまいりましたので何とか女の始末をつけなければならなくなったのです。すると今度は小夜子から腹の子のために何とかしてくれなければ困る、というようなことを申して来ました。
それは十一月の半ごろでした。
私はいよいよ来たな、と思いました。勿論手切金の問題です。それと子供の養育費です。ただどの位小夜子が申し出して来るかということは一寸わかりませんでした。
と同時に私としては一方大変安心はしたのです。金さえ出せば話はつく、父だってこの際相当の金は出してくれるでしょう。そうすればまずまずうまく話はつくだろうと思いました。
小夜子からまたの手紙には一言も金のことについては触れておりません。