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たきぐち

滝口

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1963(昭和38)年11月〜1964(昭和39)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,815 字 · 99 页

青空文庫

だが園部一族はかたちだけでも詫びを云うべきである、金三郎と米村とは、ともかくも彼を外へ押し出していった。しかし、鎌二郎の云いたいことは云わせてからであった。おやじもこんなめに幾十たびとなくあったことだろう、それからあの祖父も、と安宅は思った。祖父が藩侯から皮肉を云われるほど庭に凝ったのは、そういう不快な、理由のない誹謗からのがれるためだったかもしれない。そしておれはいまおりうか、よし、ひとつおりうを妻にして、みんなをあっといわせてくれようかな、安宅はそう思い、すると心がなごやかになるのを感じた。

客を送り出し、方丈に寄って用を済ませた。住職の徹心和尚は七十幾歳かになるが、安宅の差出した布施の包みをすぐにひらき、中の金額をしらべ、気にいったようすで頷きながら、さっきの若者は弓をやっておるな、と云った。益村安宅にはなんのことかすぐにはわからなかった。

「それ、――こんな法要はごまかしだ、と喚いていた若者よ」と和尚は云った、「おまえさんのほうへ指を突きつけていたが、眼つきはの的を覘っているようだったぞ」

「それは気がつきませんでした」と安宅は答えた、「どこから見ておいででした」