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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

それに道中機会を目付けて、あの人形を梶子の手から、奪い取ることも出来そうである。

こう考えたので松浦民弥は、納得の意を洩らしたのであった。

民弥が一緒に旅をする! このことは一方梶子にとっては、たまらなく嬉しいことであった。

「おおそれではご承知か」

声をはずませトロンコの眼をし、膝を進めて梶子は云った。

「妾と一緒に松浦様、では道中を、東海道を……」

「はい、旅するでござりましょう」

「まあ嬉しいじゃアございませんか」

梶子はハシャイだ甘酸っぱい声で、こう云いながらまた膝を進め、

「一緒に旅をするからには、宿も一つでございましょうねえ」

「さよう、当然そうなりましょう」

「まあ嬉しいじゃアございませんか」

梶子はまたもや膝を進め、

「座敷も一緒でございましょうねえ」

「さあそれは……が、まずそれも……」

「まずそれも一緒でございますとも……ホッホッホッ、何んて嬉しい……宿も一緒、座敷も一つ……夫婦のように寝泊まりして」

「…………」

「東海道を内裏雛と一緒に……これはどうでも終いには……」

「…………」

「なるようになることでござりましょうよ」

「…………」

「女男の人形は二人の仲人……」