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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「そうか、なるほど、よく云った! そうハッキリと心持ちを、臆面もなく明かした以上、覚悟も出来ておりましょうな!」
「覚悟! 何んだよ、覚悟とは?」
「一旦想いを懸けたからは、必ず通す三十郎、何をそなたに要求するか?」
「手足を縛って力ずくで、想いをとげるとでもいうのだろう?」
「いざとなればそこまで行く!」
「面白いねえ、やってごらん!」
「ヨーシ!」
ヌッと三十郎は、片膝を立ててノシ上がった。
が、急に苦笑いをし、穏かに元の座に直った。
少し前まで用心棒として、仕えていたところの梶子であった。
傍若無人の彼ではあったが、そういう梶子を暴力にうったえ、我慾をとげるということが、どうやら良心に咎めたらしい。
で、苦笑して座に直った。
気まずい感情を持ちながら、二人はそのまましばらくの間、横を向いて黙っていた。
開けられてある障子の間から、野良の風景が見えていた。
大根畑、葱畑は、青く耕地にひろがってい、稲は相当にたけを延ばし、葉を微風に靡かせてい、鳥の群は空ひくく舞い、それに驚いたか雀の大群が、パッと一時に立ったりした。
野良唄の声なども聞こえて来、モーッと鳴くノンビリした牛の声も、どこからともなく聞こえて来た。