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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

「なるほど、姿は男でござるな」

「村の方へ行くようですねえ」

「追いかけてみようではございませんか」

「そうねえともかくも急いで行きましょう」

二人は馬へ一鞭加えた。

しかし先方の二人の者は、一層に馬を走らせて、見る見る村の中へ消えてしまった。

犬帰村の佐治平の家は、それから間もなく大騒ぎとなった。

梶子が夜叉のように叫ぶのに応じ、佐治平が動顛して吃りながら答え、民弥が苦痛を顔に現わし、部屋中をグルグル歩き廻っている。

――といった大騒ぎとなったのである。

「三十郎が来たって、三十郎が!」

「ハ、はい、三十郎殿参りまして、ニ、人形の、ハ、箱を、モ、持ち去ってでござります!」

「二人で来たって? 男のような女と?」

「フ、二人で参りました。オ、男の姿をした、オ、女の人と一緒に!」

「菊女と呼んだって? え、菊女と?」

「ハ、はい、さようにござります。……サ、三十郎様がそのお方を、オ、男の姿をした、オ、女のそのお方を『さあ菊女殿、マ、参りましょう』とコ、このように呼びまして、ニ、人形箱を馬に乗せ、ゴ、ご自分たちも馬に乗り、タ、タ、タ、たった今しがた、ト、とんでってしまいました」