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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

「やってる」

と源兵衛は呟いた。

(彼奴ら鉄砲まで用意しているのか)

(油断はならない)

と源兵衛は思った。

また喊声が聞こえて来た。

「前田氏、榊原氏、ちょっと物見をお願いいたします」

「かしこまってござる」

と二人は云って、組から離れて走って行った。

ややあって二人は帰って来た。

「乱杭、逆茂木など設けまして、防戦の備え出来おりまする。……が、人影は見えませぬ」

そう二人は報告した。

「さようか」

と源兵衛は考え込んだが、

「試みに二、三十人でおかかりくだされ」

と云った。

前田という武士と榊原という武士とが、三十人の武士を率い、前進する姿が間もなく見られた。

ドッと鬨の声が湧き起こった。

つづいて爆発の音が聞こえ、夜空へカッと火光が上がり、叫喚の声が混乱して聞こえた。

(地雷火だな)

と源兵衛は思った。

(ヤブレカブレの奴ばらとはいえ、泰平の世に地雷だの鉄砲だのと、だいそれた火器を使いおる)

驚かざるを得なかった。

(浜松でも地雷を使ったし、青塚の郷でも鉄砲を使った。……乱暴な奴ばらには敵わない)

二十人ばかり逃げ帰って来た。

いずれも手足に負傷していた。

前田という武士が大息をついて云った。