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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「ナニ明暦義党?」
「此奴ら!」
「無礼!」
と、紀州藩士は怯えながらも、一斉に刀を引っこ抜いた。
「手向かう気か!」
「斬れ!」
一揮!
一人の藩士が斬り仆された。
水夫たちは海へ飛び込んだ。
藩士たちはすっかり気後れして、降参のしるしに刀を投げ出した。
間もなく二隻の帆船が、夜風に帆をはらませて沖の方へ出て行くのが眺められた。
小屋を攻め損じて退却して来た、加藤源兵衛や霜降小平たちは、林中の根拠地へ集まると、今後の方針を相談し出した。
「土地不案内、それに夜。――で不首尾に終ったのじゃ。明朝を待つことにいたそうではないか」
こう云い出したのは霜降小平で、肘のあたりを繃帯していた。
「しかし」
と加藤源兵衛は云った。
「たかが浪人と土百姓の一団、それに彼奴らもこの島の地理には、そう詳しい筈はない。夜はかえって攻めるに好都合! それをこのように敗北したとあっては、藩に帰っても話にならぬ」
と、不機嫌そうに顔をしかめた。
「霜降氏が悪いのじゃ、あの時巧みに潜行して、敵の背後にさえお廻りくだされたら……」
と、過ぎ去ったことを愚痴らしく云った。
「黙らっしゃい!」
と小平は怒った。