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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「おい、この小屋建てかけらしいぜ」
「建てかけてどこかへ行ってしまったんだなあ」
「俺ら代って建ててやろうか」
「それがいい建てろ建てろ!」
酒に酔っている機嫌もあって、そこに残してあった斧や鋸や、槌やかんなを取り上げると、小屋建築にとりかかった。
海岸の一所が海へ突き出し、その根のあたりが陸へ食い込み、湾をなしているところがあった。
そこに二隻の帆船が、十人ばかりの武士に守られ、波にゆたゆたと漂っていた。
紀州藩士を乗せて来たところの、それは巨大な帆船なのである。
水夫や楫取りが船尾の方で、武士たちに多少遠慮しいしい、賽コロの目を争っているかと思うと、武士たちは船首に集まって、酒を汲み交わして放談していた。
と、小船が五、六隻、月の海上へ現われたかと思うと、二隻の帆船に近々と漕ぎ寄せ、鈎縄を投げかけそれへ取り縋り、ムラムラと船中へこみ入って来た。
「何奴!」
「狼藉!」
「我らを知らぬか!」
「ご三家紀州家の帆船じゃぞ!」
守備の武士たちは叱※(「口+它」、第3水準1-14-88)した。
寄せて来た武士たちは嘲笑い、
「紀州の帆船と承知して参った。……我らは明暦義党の同志、この船必要ゆえ頂戴いたす」