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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
疲労と不安とで民弥も梶子も、だんだん心が弱って来、次第に体も弱って来た。
と、道が下り坂になって来た。
「あれ」
と不意に梶子は叫んで、民弥の腕へ縋りついた。
「梶子殿どうなされた」
「あれ、あそこに、あんなものが!」
梶子は顫えながら指をさした。
見れば行手の岩壁に、人の姿をした白いものが、こっちの松明の光の余波で、ぼんやりと立っているのが見えた。
民弥も何がなしにゾッとしたが、足を早めて近づいて見た。それは人間の骸骨であった。
「骸骨!」
「まあ」
「犠牲の人だ!」
そう、それに相違なかった。
この洞内へまぎれ入り、とうとう外へ出ることが出来ず、死んでしまった人の形見なのである。
(自分達もこんなようになるかもしれない)
民弥も梶子もこう思って、ゾッとせざるを得なかった。
二人はしばらく骸骨を見ていた。
と、その骸骨の右の手が、十字路をなしている道の一方を、指さしているのに気がついた。
二人は顔を見合わせた。
それから二人はその方角へ、無言のままで進んで行った。
するとまた十字路が出来ていたが、そこの岩壁にも同じような、骸骨がつっ立っていて、その左手が一方の道を、さし示すように指さしていた。