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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

「さよう」

と民弥は体さえ顫わせ、

「とうとう目的地へ来たようです。……が、しかしこの扉は、容易なことでは開かないでしょう」

「そう。……でも……」

と梶子は云って、自信ありそうに扉を眺めた。

「鍵穴がないから鍵を使って、開閉するようには出来ていない。……では、全く別の手段で……」

そう云ったままで鋭い眼で、またつくづくと扉を眺めた。

「わたしはこれでも隠密という役柄、こういうもののカラクリには、案外慣れているのですよ。……深く考えてはいけないのです。……何んでもない一向平凡なところに、秘密の鍵はあるものです。……この扉は巾四尺、高さ八尺というのですから、普通の出来とは違いますのね。……六尺までは手が届く、八尺となると届かない。……ちょっとわたしを背負って頂戴」

――で、民弥は梶子を背負った。

梶子は扉の上側の縁を、両手の指で探ったようであった。

「あった!」

と歓喜の声をあげた。

グッと一所を押したようであった。

と、扉が音も立てず、内側に向かってゆるやかに開いた。

二人は松明を高くかざし、狂気したように部屋の中へはいった。

「あッ」

と同時に声をあげた。