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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
……で、わたくしは今夜あたりから、それとなく城下を見廻って、三十郎と逢いましたならば、討って取る所存にござります」
「その計画まことによろしい」
昼の旅籠は静かなもので、三人の話している裏庭に向いた部屋の、明るい丸窓の障子へは、小鳥の影などが映って見えた。
「どれそれでは猫の蚤とりにでも、拙者は出かけるといたそうか」
鵜の丸兵庫は立ち上がった。
「兵庫様」
と菊女は云った。
兵庫は呼ばれて菊女を見、
「何んでござるかな?」
と優しく訊いた。
「いいえ……別に……でも、お気忙しい……少しは旅籠に心をおちつかせ、おいでなされたらよろしいものを……」
「アッハッハッそんなことでござるか。……おちついて家にいるは婦人のこと、男は絶えず動いておらねば、かえって元気が衰えますよ。……や、それにしても菊女殿には、可愛らしい萩丸様に行かれてしまい、ちと寂しそうでございますな」
「その上あなた様はそのように、いつも外出外出で……」
菊女はいかにも寂しそうにした。
慕ってくれた痴呆の萩丸、菊女にはこれは玩具であった。弟のように可愛いい玩具であった。
その玩具は取り去られてしまった。