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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

「当お館なのだよ、頼宣卿だったのだ」

「まあまあ」

と梶子は眼を見張って云った。

「とんと存じませんでございました」

「ところがその頃には当お館には、もうご正室がおありなされたのじゃ」

「現在の奥方様でござりましょうね」

「さよう」

と姉小路卿は頷いて、

「そこでずっと簾子姫には、独身を続けておられるのだが、当お館とは昔から今日まで、ご消息はあるということじゃ」

「お心持ちだけは通わしておられると、そういうことになるのでござりますね」

「…………」

梶子は驚きながら考え込んだ。

でも、その意味はわからなかった。

「でもどうして? 何んのために?」

「簾子様あれをご覧になられたら、頼宣卿へのご消息の端に、瀬戸内海の××島に、魚屋の財宝が隠されてあると、お書きなさるかもわからない、いや必ずお書きなさるだろう。すると野心と覇気との権化の、頼宣卿には好奇心をもって……」

「なるほどねえ」

と梶子は云った。

「そうして魚屋助右衛門の財宝を、紀州様のお手で掘り出させる。――そうなさろうとご計画なされましたのね」

「もちろんそれも一つだが、好奇心のお強い紀州様をして、××島へ渡らせて、親しくあの島を見ていただきたいと、そう伊豆様にはお思いなされたのじゃ」