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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

街道筋で

月明りで松並木が黒く見えてい、お城下の灯火が遙か向こうに、点々としてともっていた。

と、街道を追われた犬のように、一散に走って来る人影があったが、非人小屋の前まで来ると、タレをかかげて飛び込んだ。

それは刃三十郎であった。

「おお手前たちうまくやってくれたな」

と、ころがされている菊女を見ながら、三十郎はニタリと笑った。

「刃の旦那、この通りで」

「褒美の後金いただけるでしょうねえ」

代五郎と浅吉とが得意そうに云った。

「褒美の後金やるともやるとも。……が、その前に、もう一つ、お前たちにやって貰うことがある……気の毒だがこの女をもう一度担いで少しばかり遠ッ走りをしてくれ」

「遠ッ走り? 何故ですい?」

けげんそうに孫九が訊くと、

「実はな」

と三十郎はセカセカした口調で、

「鵜の丸兵庫と藩士たちに、俺は今追われているのだよ。……一度は藩士たちをマイて逃げたが、兵庫が中に加わって、とうとう俺をさがし出し、ついそこまで追っかけて来た。おっつけここへ来るだろう。……彼奴らに追いつかれては一大事! ……さあ菊女を担いで逃げろ!」

「そりゃ大変だ!」

と三人は叫んだ。

「まごまごすると俺たち三人も、とらえられたら巻添えを食う! それ逃げろ! 女を担げ!」