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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「宥免状お書きくださりませ」
「…………」
「あなた様の祖父様、紀州大納言頼宣様、わたくしどもの同志数十人を、紀州表におきまして、お捕え遊ばしましてござります。……この頃に処刑遊ばすとか。……これらの人々をお助けくだされと、あなた様より大納言様へ、一筆お認めくださりませ」
「菊女!」
と萩丸は眼を据えて云った。
「ではそなたも、同志の一人か?」
「同志の一人にござります」
「この治まれる徳川の御代を、覆えそうとする姦党の一人か!」
「何んの姦党でありましょうぞ! 何んの治まれる御代でしょう! ……関ヶ原の合戦以来、諸大名多くとり潰され、浪人数万出でましたが、仕官は出来ず饑えに迫り、一家離散、親子別離、ある者は猫の蚤とりなどという、賤業にさえたずさわり、かつかつその日をくらすありさま! ……不平は巷に満ちております! ……何んの治まれる御代でしょう!」
「そういう事はわしには解らぬ。……ただ祖父様が仰せられた。正雪は姦物、油断のならない煽動家であり山師であったと。……そなたたちはその余類じゃそうな」
「妾ことはその正雪様の、股肱の一人とたのまれました、熊谷三郎兵衛の妹の菊女」