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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

十四

「―――アウフ、ウィーダアゼーエン!」

「アウフ、ウィーダアゼーエン!」

と、悦子もいつの間にか覚え込んだ独逸語で云いながら手を振って答えた。

十四

二十七日の朝の「かもめ」で立つことにしていた幸子は、前の晩に荷纏めをしてみると、渋谷へ持って行く土産物や何やかやで鞄が大小三つ程になり、自分一人では不便なので、こう云う機会にお春にも東京見物をさせてやることを思いついた。貞之助の身の周りの世話は、妙子が留守をしてくれるので心配はないとすると、此方はお春を連れて行く方がいろいろの点で便利である、と云うのは、事に依ったら、学校の始まる時分までにお春を附けて悦子を先に帰すことにして、自分は暫くあとに残りたい、久し振に東京へ行くのであるから、少しはゆっくりして、芝居なども見て帰りたい、―――と、幸子は内々そんな目算を立てたのであった。

「あ、お春どんも来たのん」

雪子と、本家の長男の輝雄と、三人で東京駅へ出ていた悦子は、母のあとから思いがけなくお春が降りて来たのを見ると、歓声を挙げた。そしてタキシーへ乗る間にも、

「あれが丸ビル、あの向うが宮城やで」

と、もういっぱし先輩顔をしながら、頻りにはしゃいだ。