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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
ように浮かぶのである。姉がこう云うものをわざわざ大阪から持って来たのは、昔の栄華の形見としてこれだけでも身近に眺めていたいのであろう。そして一つには、客間と云うには余りにも殺風景なこの部屋の装飾にと云うつもりなのであろう。が、どう見てもそれらの物はこの座敷を引き立てる役には立っていないで、反対の効果を齎していた。それらの調度があるために座敷はひとしお安普請が目立ち、調度はそれが亡き父親の遺愛の品々であるだけに、東京の場末のこんな所へ持って来られて置いてあるのがいかにも奇妙で、恰も姉その人の境遇を象徴しているようであった。
「そんでも、よくまあ荷物が収まったわなあ、姉ちゃん」
「ほんに。―――荷物が此処へ届いた時は、これだけの品物が収まるやろうか思うたけど、何処へどう這入ったんか、どうぞこうぞ片附いてしもうた。家云うもんは、狭いようでも詰めたら詰まるもんやわな」
その夕方、幸子を二階へ案内すると、そのままそこに坐り込んでそんな風に話し出す姉であったが、そう云う間にも、もう子供たちが上って来て二人の襟首に取り縋るので、暑苦しい、下へ行ってなさい、叔母ちゃんのべべが皺になるがなと、姉は絶えず叱りつづけつつ言葉を継がなければならなかった。