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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
階下の会場では、悦子の次に「黒髪」、「桶取」、「大仏」が出たあとで、五番目に「作こう」と云う名取の娘の「江戸みやげ」が済み、今休憩の時間に這入ってお茶やちらし鮨の接待が始まっていた。見物席に当てられた応接間には、今日舞う人達の家族の外にはわざと案内を出さないようにしたために、精々二三十人ほどの頭数が見えているだけであったが、その中に交ってローゼマリーとフリッツとが、最前列に席を占めて、ときどき膝を崩したり胡坐を掻いたりしながらも、大人しく座布団の上にすわって、一番最初の悦子の舞から見物していた。外のテラスには、この二人の母であるヒルダ・シュトルツ夫人もいた。彼女は今日の催しのことを子供達から聞いて、是非見に行くと云っていたのであるが、さっき悦子のが始まる時にフリッツが知らせに行ったので、庭の方から這入って来たのであった。そして、何卒お上りと云うのを、いえ、わたし此処の方がよろしいですと、テラスへ籐椅子を出して貰って、そこから舞台の方を見ていた。
「フリッツさん、今日はえらい大人しおまんな」
と、白襟に裾模様のある縫い紋を着たおさく師匠が、舞台の金屏風の蔭から出て来てフリッツに云った。