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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
「ほんになあ、何処の国のお子達でんねん」
と、見物席の中にいた神杉未亡人が云った。
「此処の娘ちゃんのお友達で、独逸のお方のお子達でんねん。わてとえらい仲好しで、いつも『おッ師匠はんおッ師匠はん』云うてくれはりまんねんで」
「そうでっか。そんでも感心によう見てはりまんなあ」
「それにまあ、ちんと行儀ようすわりやはって、―――」
と、誰かが云った。
「ええと、独逸の娘ちゃん、あんさんのお名前何とやら云やはりましたな、―――」
と、おさく師匠はローゼマリーと云う名が思い出せないで、
「―――あんさんも、フリッツさんも、そないしてはったらお御足が痛いことおへんか。痛かったらお御足お出しやしたら」
そう云われてもローゼマリーとフリッツとは、どう云う訳か今日はまるで別人のように済まし込んで、むずかしい顔つきで黙りこくっていた。
「奥さん、あなたそれお上りになりますか」
と、貞之助は、シュトルツ夫人が膝の上にちらし鮨の皿を載せて、不器用に箸を使い始めたのを見つけると云った。
「あなたそんな物お上りになれんでしょう。御迷惑だったら止めて下さい」
そう云って貞之助は、
「おいおい、何かもっと、シュトルツさんの奥さんに食べられそうなもんないのんか」