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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

の探偵小説の挿絵などにある、矮小な体躯に巨大な木槌頭をした畸形児、―――あれに感じが似ていると云うことで、貞之助達は前に彼女から屡その描写を聞かされ、彼がお客を断る時のぶっきらぼうな物言い、庖丁を取る時の一種興奮したような表情、眼つきや手つき、等々を仕方話で委しく説明されていたが、行って見ると、又本物が可笑しいほど彼女の真似によく似ていた。親爺は先ず、客をずらりと並べて置いて、一往何から握りましょうと注文を聞きはするけれども、大概自分の仕勝手のよいように、最初に鯛なら鯛を取り出して、頭数だけ切り身を作って、お客の総べてに一順それを当てがってしまい、次には蝦、次には比目魚と云う風に一種類ずつ片附けて行く。二番目の鮨が置かれる迄の間に、最初の鮨を食ってしまわないと、彼は御機嫌が斜めである。当てがわれた鮨を二つも三つも食べずに置くと、まだ残っていますよと、催促することもある。種は日によっていろいろだけれども、鯛と蝦とは最も自慢で、どんな時でも欠かしたことはなく、いつも真っ先に握りたがるのは鯛であった。トロはないか、などと云う不心得な質問を発するお客は、決して歓迎されなかった。