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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

そして、貞之助夫婦も、雪子の関西に於ける楽しみの一つがこの鮨にあることを察していて、大概彼女の滞在中に一二度は此処へ誘うのであるが、貞之助はそんな時に、幸子と雪子の席の間に自分の席を占めるようにして、時々、目立たぬように、妻と二人の義妹たちへそっと杯を廻してやるのであった。

「おいしい、とてもおいしい、………」

と、妙子はさっきから溜息をつきつき食べていたが、雪子があたりへ気がねしながら廻って来た杯の方へ身を屈めている向うから、

「貞之助兄さん」

と、声をかけた。

「―――こんなにおいしいもん、あの人等にも食べさせたげたら宜しゅおましたなあ」

「ほんに」

と、幸子も云った。

「キリレンコやお婆ちゃんも誘うたらよかったわ」

「それは僕かて気イ付かんでもなかったけど、急に人数が殖えてもどうか思うたし、あの人等、こんなものをよう食べるかどうか思うて、………」

「何云うてはりまんねん」

と、妙子が云った。

「西洋人かて何ぼでもお鮨食べまっせ。なあおっさん」

「へえ、食べます」

と、親爺は今、俎板の上で暴れ廻る蝦を、水でふやけた太い五本の指をひろげて、手の中へ押さえ付けながら、

「うちの店へも時々西洋人が見えまっせ」