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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
で何にでも触ると云う風なので、あれでは病菌をバラ播くようなものだと、第一に雪子から苦情が出た。そして結局、お春が罷められて雪子が任に当るようになったが、これはこう云うことには馴れたものなので、注意が甚だ細心であり、と云って徒に恐がるのではなく、看護も実によく行き届いた。彼女は病室用の食器類は全然下女達の手を藉りず、煮焚きから持ち運びから、洗滌までを自分が担当し、高熱が続いた一週間程の間は、夜は看護婦と交代して二時間置きに氷嚢を取り換えなどして、殆ど眠らない日が多かった。
病状は順調な経過を辿り、一週間後には熱も漸く下って行ったが、それでもこの病気は、体じゅうの紅いぶつぶつが乾せて、瘡蓋が落ちるようになり、全身が一と皮剥けてから全快するので、それ迄には四五十日は懸る、と云うことなので、京都行きを済ませたら間もなく立つ積りでいた雪子は、当分足止めを食わされた形になった。彼女は東京へ訳を云ってやって、衣更えの衣類を取り寄せなどして、看護に身を打ち込んでいたが、そんな役目を引き請けてでも、東京に帰るよりは此方で暮す方が楽しいらしかった。そして、自分以外の者が離れの方へ来ることをやかましく云って、中姉ちゃんは病気には負け易いよってにと、幸子をさえも病室から遠ざけるようにしたので、幸子は病人の児を抱えながら何の苦労も