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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

その後の様子は分らないかと云うと、さっきこいさんから今夜立つと云う電話があったので、そのことを知らせてやった時の話では、ますます悪く、狂人のように悶えつづけている、国の方へも電報を打ったから、明日の朝は親達も来るだろうと思います、と云うことであったと云う。幸子は妙子が今立って行ったこと、自分も後に残っていても仕様がないので、明日じゅうには立つ積りであること、等々を語って、電話を切りしなに悦子の様子を尋ねると、これはもう元気になり過ぎて、病室に大人しくしていることが出来ず、ふらふらその辺へ飛び出したがって始末に負えない、瘡蓋も体じゅう殆ど剥がれて、纔かに足の蹠に少し残っているだけである、と云うのであった。

幸子は自分も怱々に立つとして、姉にどう云う挨拶をして行ったものか当惑したが、どう考えてもこの場合を巧く云い繕う口実がないので、いくらか変に思われても仕方がないと度胸を極めて、翌朝電話で、昨夜妙子が急用が出来て関西へ帰ったことを告げ、自分も今日帰ることにしたので、何処かでちょっと会いたいが、此方から渋谷へ出向こうかと云うと、それならあたしが行こうと云って、間もなく妙子の鞄を持って姉が浜屋へ現れた。