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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

「その奥畑商店の店員達云うのんは、始終田中の板倉の所に出入りしてたのと違うか知らん」

「どうですやろ。そんな旧い友達がいるなんてこと、聞いたこともあれしませなんだけど」

「そう云う人達がいたのんやったら、こいさんと板倉のことは相当世間に知れ渡ってると思わんならんな」

「ほんに。―――啓坊が、僕は手を廻して調べてるよってに何でも知ってます云うてたのんは、その人達のことと違うかいな」

迎えの車はあれから直ぐに往った筈であったが、妙子は一時間以上もしてから帰って来た。聞けば彼女は自動車が往き路でパンクしたために病院で長いこと待ったのであった。それはよいが、その間に店員達が来てしまい、よもやと思っていた啓坊が来たので、生憎皆に遇うようなことになってしまった。(啓坊はその時刻には店にいない筈であるが、多分店員が電話で知らしたのであろうと妙子は云った)尤も、妙子は努めて啓坊から遠ざかるようにしていたし、啓坊も場合が場合故慎しんでいたようであった。ただ妙子の帰りしなに、こいさんもっといててやったらええやないかと、傍へ寄って来て親切めかしく耳こすりしたのが、皮肉と取れば取れなくもなかった。