轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

やがて本山駅へ来てみると、成る程この辺は水勢が物凄い。貞之助は暫く足を休めるつもりで線路から駅の構内へ這入ったが、既に駅前の道路には水が一杯になっており、構内にも刻々浸入しつつあるので、入口に土嚢や蓆を積み上げて、駅員だの学生だのが代る代る、隙間から漏れて来る水を帚木で掃き出している。貞之助は、そこらにうろうろしていれば自分も帚木を持って手伝わなければならないので、一服吸うと、又ひとしきり強くなり出した雨を冒して、再び線路の上を進んだ。

水は黄色く濁った全くの泥水で、揚子江のそれによく似ている。黄色い水の中に折々のような色をした黒いどろどろのものも交っている。いつか貞之助はその水の中を歩いているので、おや、と思って心づくと、散歩の時に覚えのある田中の小川が氾濫していて、それに架した鉄橋の上にさしかかっていた。鉄橋を渡って少し行くと、線路の上は又水がなくなったが、両側の水面は大分高くなっている。貞之助はそこで立ち止まって前方を眺めた時、さっき甲南学校の生徒が「海のようだ」と云ったのは、今自分の眼前にあるこの景観のことなのだなと合点が行った。雄大とか豪壮とか云う言葉を使うのはこの場合に不似合のようだけれども、事実、最初に来た感じは、物凄いと云うよりはそう云う方に近く、驚くよりは茫然と見惚れてしまった。