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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
から脱け出ることが出来るであろうか、と云う気がした。が、さしあたり女史と弘少年のことが案じられるので、まだ先生と弘さんがいたはるねん、どないぞしたげて、―――と、しきりに急き立てている時に、どーん、と、藤棚を揺す振ったものがあった。それは一本の丸太が流れて来て打つかったのであったが、よし、と云うと、板倉は又水の中へ降りて行って、その丸太で藤棚から向うの窓へ橋を架け始めた。丸太の一方の端を窓の中へ押し込み、此方の端を、妙子も手伝って藤棚の柱に藤蔓で縛りつけて、橋が出来上ると、彼はそれを伝わって向う側へ渡り、窓の中へ這入って行ったきり可なり長い間姿を見せなかったが、後で聞くと、窓のところでカーテンのレースを引き裂いて紐を作っていたのであった。彼がその紐を、比較的窓に近い位置にいる女史に向って投げると、女史がそれを受取って遠い壁際のピアノの上にいる弘少年に投げた。彼は二人をそれに掴まらせて最初に窓際まで引っ張り寄せて置き、次に弘少年を、丸太を伝わって藤棚まで引き寄せ、次に棚の上へ抱き上げた。それから又窓際へ戻って行って、女史を同じ方法で救い出した。
こう云う板倉の活躍も、相当の時間を費したようでもあるし、割合に短時間であったようでもあるし、実際どのくらいの間そんなことをしていたのであるか、後になって考えてみても