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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
不足を云えば際限がないが、女としては、何より彼より夫に可愛がって貰えることが一番幸福なのだから、何卒くれぐれも考えて下すって、精々早く返事をして下さるように、―――と云うのであった。
幸子は、予め断る時の伏線を張って、雪子自身はよいも悪いも私達次第なのだから、その方は面倒はないけれども、肝腎な本家が何と云うか、私達はただ代理を勤めているだけなので、野村さんの身許調べなども一切本家がしているような訳だから、―――と、雪子が悪く思われないように、専ら本家へ責任をなすりつけるような挨拶をして帰したのであったが、引き続いて気分がすぐれず、医者の忠告に従って絶対安静を守っていたので、そう早速に雪子の考を探ってみる折もなく過していた。が、見合いの日から五日目の朝であったか、偶然病室が二人だけになった機会を捉えて、
「雪子ちゃん、―――どうやねん、あの人?」
と、気を引いてみた。そして雪子が、
「ふん」
と云ったきり後を云わないので、一昨々日の朝の陣場夫人の来訪の趣意を話して聞かせて、
「―――まあ、そない云やはるねんけど、雪子ちゃんが若う見えるとこへさして、あの人、えらい老けて見えるよってに、その点がどうやろうか、………」