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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

01 上巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页

青空文庫

六

「ほんに、これやったらどないもあらへん。―――何でやねん、こいさん」

「帯が新しいよってにキュウキュウ云うねんが。この帯やったら、古うなって、地がくたびれてるよってに音せえへんねん」

「ほんになあ、そのせいやってんなあ」

「少し頭を働かしなさいや」

「御寮人さんに電話でございます、井谷さんから、―――」

と、お春が廊下を駈けて来て云った。

「あ、えらいこッちゃ、電話かけるのん忘れてしもてん」

「ほれ、もう自動車来たらしいわ」

「どうしょう、どうしょう」

と、幸子は鼻を鳴らしたが、雪子はまるで他人事のように澄まし込んでいた。

「なあ、雪子ちゃん、どない云うとこう」

「どないなと云うといて」

「そうかて、あの人、味善う云わなんだら承知しやはらへんねん」

「そこのとこ、ええように頼むわ」

「そんなら、兎に角、明日のとこだけ見合せてもろとくわな」

「ふん」

「ええやろ、それで」

「ふん」

立っている幸子には、坐って下を向いている雪子の表情を、どうにも読み取りようがなかった。

六

「悦ちゃん、そんなら行って来まっせ」

雪子は出しなに洋間を覗いて、小女のお花を相手にままごとの道具を並べている悦子に云った。