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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

01 上巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页

青空文庫

七

にはいられないのであった。で、幸子と妙子とは会が終ってから、有馬方面へハイキングに出かけた貞之助と落ち合って、神戸で晩飯をたべる約束になっていたのであるが、雪子はその方だけを棄権して先に帰ることにしたのであった。

七

「ちょっと、中姉ちゃんまだやろか。―――」

二人はさっきから門のところに待っているのに、幸子がなかなか出て来そうもないので、

「―――もう二時になるがな」

と、妙子は運転手が扉を開けて立っている方へ寄って行った。

「えらい長い電話やなあ」

「まだよう切らんのんかいな」

「切ろう思うても切らしてくれはれへんのんで、気が気やないねん」

雪子は又しても他人事のように可笑しがりながら、

「悦ちゃん、お母ちゃんに云うといで。―――電話ええ加減にして早よいらっしゃいて」

「乗ってよか、雪姉ちゃん」

と、妙子は扉に手をかけながら云ったが、そう云う礼儀は正しく守ることにしている雪子が、

「待ってよう」

と云ったきり応じないので、自分も仕方なく車の前に止った。そして悦子が奥へ駈け込んで行ったのを見ると、

「井谷さんの話のこと、聞いたで」

と、運転手の方へ聞えないように云った。

「そうか」