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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

01 上巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页

青空文庫

「写真も見せてもろたで」

「そうか」

「雪姉ちゃん、どう思うてるのん」

「写真見ただけで分るかいな」

「そやよってに、会うてみたらどうやのん」

「………」

「折角云うて来てくれはったのんに、会うのんいやや云うたら中姉ちゃんが難儀するがな」

「そうかて、そない急かんならん理由あるやろか」

「ま、きっとそんなこッちゃないやろか云うててんけど、………」

そこへどたどたと足音がして、

「あ、ハンカチ忘れたわ、誰か持って来て。ハンカチハンカチ」

と、はみ出した長襦袢の袖をそろえながら、幸子が門口へ飛んで出た。

「お待ち遠さん」

「長いなあ、ほんまに」

「そない云うたかて、何と言訳したらええのんやら、………今やっと切ったとこやがな」

「まあ、ええ、その話後で聞こ」

「早よ乗りいな」

と、雪子の尾について妙子が云った。

幸子の家から蘆屋川の停留所までは七八丁と云うところなので、今日のように急ぐ時は自動車を走らせることもあり、又散歩がてらぶらぶら歩いて行くこともあった。そして、この三人の姉妹が、たまたま天気の好い日などに、土地の人が水道路と呼んでいる、阪急の線路に並行した山側の路を、余所行きの衣裳を着飾って連れ立って歩いて行く姿は、さすがに人の目を惹かずにはいなかったので、あのあたりの町家の人々は、皆よくこの三人の顔を見覚えていて噂し合ったものであったが