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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

01 上巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页

青空文庫

八

を駈け上るところを、居合す人々は皆振り返って眼を欹てた。日曜の午後のことなので、神戸行の電車の中はガランとしていたが、姉妹の順に三人が並んで席に就いた時、雪子は自分の真向うに腰かけている中学生が、含羞みながら俯向いた途端に、見る見る顔を真っ赧にして燃えるように上気して行くのに心づいた。

八

悦子はままごとにも飽きてしまうと、お花に云いつけて二階の部屋から帳面を持って来させて、洋間で宿題の綴方を書いていた。

いったいこの家は大部分が日本間で、洋間と云うのは、食堂と応接間と二た間つづきになった部屋があるだけであったが、家族は自分達が団欒をするのにも、来客に接するのにも洋間を使い、一日の大部分をそこで過すようにしていた。それに応接間の方には、ピアノやラジオ蓄音器があり、冬は煖炉に薪を燃やすようにしてあったので、寒い時分になると一層皆が其方にばかり集ってしまい、自然そこが一番賑かであるところから、悦子も、階下に来客が立て込む時とか、病気で臥る時とかの外は、夜でなければめったに二階の自分の部屋へは上って行かないで、洋間で暮した。二階の彼女の部屋と云うものも、日本間に西洋家具の一揃が備えてあって、寝室と勉強部屋を兼ねるようにしてあったのだけれども、悦子は勉強するのにも、ままごと遊びをするのにも、応接間ですることを好み、いつも